ピアスにまつわる覚書
ブログを読み返すと、3月5日頃から食欲に問題があったようだ。今はほぼ食べれない、食べる気が起きない。20日程度で人の体は変わってしまうようで、肋骨が浮いている。当HPは食レポ中心のはずなのに、ヤベー！
汚い話になってしまうが、元恋人の咀嚼したものであれば何とか飲み込めた。赤ちゃんにそういうことをしようとして(固い食品を柔らかくしてあげるために……)、めちゃくちゃ母親に怒られるジジイババアがどこの実家にもいる気がする。｢虫歯が移るでしょ！｣。元恋人はジジイで、私は赤ん坊なのか？
話は変わるが先日、耳と指にピアスをつけた。ピアスに対しては｢痛そう、イヤリングでいいのに｣という気持ちがあり、一生開けることは無いと思い込んでいた。しかし、気を病んで顔までも自傷していた私を見かねたフォロワーが一言、｢ピアス嫌い？｣とリプライをくれた。そのフォロワーの女性は私くらいの年の頃たくさんピアスを開けていたという。これだ。と思った。本当に急に思った。
フラフラとした足どりでドン・キホーテへ行き、ピアッサーというものを３つ買う。そして、ネットでバーベルというものを買った。耳だけではつまらないから、指にも開けてみようと思ったのだ。｢フィンガーピアス｣という存在に、私は一時期憧れていた。しかし当時働いていた私は、この薬指に可愛いピアスを刺したいな……とうっとりするだけでとても行動には移せなかった。今は無職だ。ご飯を上手く食べられず、電車の床に座り込んでしまう、1人暮らしでその日暮らしの無職。指に穴を開けようが開けまいが 誰にも文句は言われない。憧れを実行する時がきた！
まず、皆が開けている耳たぶからやってみようと思った。私の妹も去年の暮れにピアスを開けていたし、なんとなくハードルが低く感じられたのだ。いざ、ピアッサーを準備し、耳に近付けると……怖かった。ものすごい恐怖が私を支配し、まるで銃口を突き付けられているかのような気分になった。鋭い針が耳を狙っている！怖すぎて妹に電話したところ、｢音がでかくてビビるけど、あんま痛くないよ｣とのこと。ウーン、でもこんなの怖いに決まってる！そこで私は、ヘヴィ・メタルをかけることによってその恐怖を緩和した。聖飢魔IIのJACK THE RIPPERを大音量で流す。｢何も無かったように俺は現場を立ち去る♪胸に刺さったナイフが不気味に笑う♪｣｢アイムジャックザリッパー♪ネバービフォーザ ヘル♪｣……ガシャン！楽曲が盛り上がる瞬間、私は銃弾を放った！ロンドンの街中を震撼させた切り裂きジャックのように……私の銃弾は耳を貫いたのだった。確かに刺さる瞬間の衝撃だけが強く、あまり痛くはなかった。
次は指。フィンガーピアスだ。これは指の表面の皮膚を摘んで貫くように穴を開け、バーベルを差し込む。ピアッサーとは違い、注射針のようなものでプスプスと刺す必要があるのだ。いやこれも怖い。しかしながら、フィンガーピアスに対しては恐怖よりも楽しみが勝った。｢薬指にピアスをしている自分｣を想像するだけで、胸の高まりが抑えられなかった。なにか不思議な魅力がフィンガーピアスにはある気がする。(ちなみにニードルを刺す時は聖飢魔II｢ロマンス｣を熱唱しつつ、しっかりと刺した。)
可愛すぎる。なぜ今までやらなかったのだろう。だがこの部位のピアッシングには短所がある。ずばり寿命が短いのだ。他の部位よりも安定しにくい……というかまず安定しない。舌や鼻と違ってやたら動く指に付けるピアスは、数週間～数ヶ月を目処に排除されてしまう。今回調べて知った言葉だが、身体がピアスを異物と感じ取り体外へ押し出してしまうことを｢排除｣と呼ぶらしい。一時は魅力的に指を彩ってくれるが、｢排除｣されてしまう……短命で、儚いピアスなのだ……。
かく言う私も2週間目頃から腫れが引かなくなり、マキロンやら洗浄やらを必死に行ったものの、根負けして一度外してしまった。また開け直す予定ではあるが、可愛いピアスがいなくなってしまうのはなかなかショックだった。
それにしても頼んでもいないのに異物と受け取られ排除されていき、どうにかマキロンを塗られて指に引っ付いているピアスというのが、何故か自分とかぶってしまった。薬に頼ってギリギリ生きている。社会からいつ排除されるか分からない。捨てられたくない。でも何も望んで始まったわけではない……。｢もういいよ｣とでも言うように、私はそっとピアスを外した。
中指には綺麗に排除痕(正確には腫れ跡？)が残っている。ひとから｢よりによってどうして左手の薬指を？｣と訊ねられたけれど、正確な答えは分からない。別段意味はないと思う。ただこの痕跡は腕の傷に比べると、どこか婚約指輪のようで、少し素敵だなと思った。
まだ食欲は出ない。
