鳥になりたい
転職して1ヶ月、このブログを始めて3ヶ月が経ちました。あっという間です。最近は暗い記事ばかり続いてしまいましたが、本当は食レポブログなんです。咳止めを過剰摂取した感想を書くブログではないんです。中野を中心においしい食べ物屋さんを紹介する、お役立ちグルメサイトにしたいです。中野観光に来た家族が、このブログを読んで昼食場所を決めるような…そんな老若男女問わず読んでもらえるブログに…。(中野観光とは?)
という訳で今日は、穿頭術について書いていきます。
穿頭術とはその名の通り頭蓋骨に穴を開ける手術のことで、トレパネーションとも呼ばれています。頭蓋骨に穴を開けることで、"悪い気"や"悪霊"を追い出せるという考え方から、精神病などの治療のために古来から行われていました。
ロボトミー手術と混同されることも多いですが、ロボトミーが脳の一部を切除するのに対し、こちらは頭蓋骨に小さな穴を開けるだけで完了します。頭皮を切開し、ドリルで穴を開ける…なんだかスピリチュアルで怪しげな手術ですが、現代でも行っている人々がいるのです。
自分がトレパネーションを知るきっかけになったのは、この1冊。
四肢切断愛好や自己去勢、自慰による特殊な死亡事例などがまとめられた書籍で、トレパネーションも取り上げられています。この本によると、前述したような「古来行われていた民間療法としてのトレパネーション」とは少し違った考え方で、頭蓋骨への穴あけを実行・推奨する人々がいるそうです。
産まれたばかりの赤ちゃんのおでこにはへこみ(大泉門)がありますよね。触ると柔らかい場所。あれは頭蓋骨の隙間が閉じていない状態で、成長とともにへこみは無くなっていきます。そこに再び穴を開ける、それがトレパネーションです。何でも、頭蓋骨に穴を開けることで脳の血流量が上がり、意識の覚醒が得られるそうです。それまでの鬱々とした気分が晴れ、まるで子供の時に戻ったような感覚になれる、超ハッピー!……というのが、国際トレパネーション唱導会(ITAG Trepan.com | ITAG – International Trepanation Advocacy Group)の主張です。
にわかには信じ難い話かもしれません。しかし1960年代からトレパネーションはじわじわと普及し、自ら頭蓋骨に穴を開ける人々が現れたのです。……いや怖い!自分の頭にドリル向けるって、なに!狂っている! トレパネーションという存在を知った自分は、異様な恐怖感を覚え、震え上がりました。「よく分からないけど、怖い…忘れよう……」そう思い、頭の隅に封印してしまいました。怖いもん。
それから数ヶ月が経ち、偶然手に取った漫画がホムンクルスでした。
殺し屋イチなどで有名な山本英夫の長編作品です。ホームレス生活をしている主人公が、突然現れた医学生に「70万円で頭蓋骨に穴を開けさせてくれないか」と持ちかけられる……といった内容で、まさに世界一有名なトレパネーション漫画なのです。
1度はその存在を忘れようとした自分ですが、思わぬ所で運命の再開をしてしまいました。トレパネーションからは逃げられない……。この漫画について語り始めると3万字を超えてしまうので今回は割愛します。でも最高の漫画です。教科書に載せてほしいなぁ。
日本においてトレパネーションの存在を広めたのは、まさしくホムンクルスです。オランダの怪しい手術(非合法)を題材にした作品が、ビックコミックスピリッツで週一で掲載されたのです。有名にならない訳がありません。山本先生は天才です。ただ、作中でのトレパネーションは「第六感を目覚めさせるための行為」として扱われ、オカルト要素の強い印象を受けます。ちょっと違う!確かに意識の覚醒=第六感の芽生え と解釈することもできますが、現実でのトレパネーションはあくまでも「楽しくなるための行為」であり、自己プロデュースの1つの形なのです。
いや、何を語っとんねん、さっきまで怖い怖い言ってたやろが。しかし、再びトレパネーションという存在に触れた自分は、もはや恐怖心を通り越し その異様さに魅せられてしまいました。ジュディ・オングです。ズルズルと惹き込まれ、トレパネーションのドキュメンタリー映画を購入するまでに至りました。
こちらの日本語字幕を監修しているのは、山本作品に情報提供をしていたケロッピー前田氏。日本のトレパネーション界において、氏の功績は多大なものであります。
この映画が本当にすごい。アフリカ部族が麻酔無しで行う手術(痛そう…)から、トレパネーション普及を目指し選挙出馬までした伝説の女性のセルフ・トレパネーションの様子(痛そう…)まで、しっかりと映像で収められているのです。そして、実践者の証言も多く収められており、どれも興味深い内容になっています。刺激が強く、気絶しそうになりながら視聴しました。科学的根拠はない!と否定的な専門家も登場するのが、ドキュメンタリーとして程良いバランスを保っています。
頭蓋骨に穴を開ければ、本当に脳内血流量が増え、幼児のようにハツラツとした思考が手に入るかも知れません。単に、「他人とは違うことをしている」という意識からくる高揚感なのかもしれません。実践者は語ります。
「トレパネーションを行うことで、思うがままに、脳の中を活発化させる事が出来るようになります。高度の意識に目覚め、楽観的で、情熱的な人間になるでしょう。これまで悩んでいたようなささいな問題なんかは楽しみにさえ思えるようになります。一生を通して最高の気分が持続するわけです。」
X51.ORG : 頭蓋穿孔 - 「トレパネーション」は第三の眼を開くか より ※ショッキングな画像あり
毎日思い悩み、自死さえ考えてしまう自分としては、夢のような話です。今すぐオランダに行きたい。ただの夢物語だとしても、惹き付けられる何かがあるのです。
普段我々は、様々な抑圧の中で過ごしています。社会的規範、立場、対人関係……頭に穴を開ける、というのは そのような問題を「些細なこと」にしてしまうようなパワーがあります。上司にボロクソ怒られても、「いや、自分はトレパネーションしてるんで(笑)」と謎の余裕を見せられる気すらします。妄想です。穴を開けることで、この身体から自由になれるような……そんな感覚があるのです。いつしか自分も頭蓋骨に穴を開けたいと思うようになりました。てへ
実はもうすぐ誕生日です。電気・水道の止められそうな部屋で頭蓋骨に穴を開ける手術に思いを馳せながら20歳を迎えるとは、思ってもいませんでした。辛いことは多いですが、おそらく生き続けます。ううう……。
とどのつまり中野観光に来た家族にトレパネーションをさせたい。これからもよろしくお願いします。